健康相談Q&A
このページは、池田市広報紙に掲載された内容です。
健康相談 Q&A
腎臓の働きを示す数値
2018-04-01
Q健康診断の結果にある腎機能の見方を教えて下さい。
A腎臓は生命活動を行ううちに身体にできる老廃物を尿に捨てる働き(腎機能)を担っています。健康診断や人間ドックでは、腎機能を血清クレアチニンやeGFR(イージーエフアール)で示します。
血液中のクレアチニンは腎臓から尿に捨てられるので、腎機能が低下すると高くなります。腎機能は腎臓病がなくても20歳以降少しずつ低下してゆきますし、クレアチニンは主に筋肉で産生され、男性や筋肉量が多い人では高めになるので、血清クレアチニンが何mg/dL以上であれば異常であるか一律には決められません。目安としては、成人男性で1.6mg/dL以上,成人女性で1.3mg/dL以上であれば明らかに異常ですし、成人男性で1.2mg/dL以上,成人女性で1.0mg/dL以上であれば要注意です。
eGFRは血清クレアチニンと年齢と性別とから求めた腎機能です。腎臓が1分間に何mLの血液を洗っているのかを示します。血清クレアチニンとは逆に、腎機能が低下するとeGFRは低くなります。eGFRが慢性的に30mL/分/1.73m2未満になると「慢性腎不全」と呼ばれ、15mL/分/1.73m2未満になると腎代替療法(血液透析,腹膜透析,腎移植)の準備が必要です。eGFRも血清クレアチニンから求めるので筋肉量の影響を受けます。筋肉量が一般の人と違う時には、血液中のシスタチンC濃度を測定して、その値と年齢と性別とからeGFRを求めると腎機能が正しく評価できます。
腎臓病は慢性のものが多く、現在の腎機能だけでなく、腎機能が低下する速さも重要です。健康診断や人間ドックの結果は古いものも捨てずに保管しましょう。肺炎球菌ワクチンは接種したほうがよいでしょうか
2018-02-01
Q:肺炎球菌ワクチンは接種したほうがよいでしょうか
A:現在、肺炎は死因の第3位です。死亡者の95%以上を65歳以上の高齢者が占めています。肺炎の主な症状は、せき、たん、息切れ、胸の痛み、発熱などです。ただし高齢者は、肺炎を起しても、このような症状をはっきりと示さないことがあるため注意が必要です。肺炎に罹らないためには、普段から栄養の保持に心掛け、よく体を動かし、禁煙に努めることと、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種しておくことが必要です。
肺炎の原因となる微生物で最多は肺炎球菌と言われており、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)接種は、肺炎球菌性肺炎の約80%に対して予防効果があるとされています。予防接種の効果は、健康な成人であれば接種後2~3週間に現れます。高齢者や慢性呼吸器疾患患者はインフルエンザワクチン接種との併用で、さらに有効であることも示されています。
肺炎球菌ワクチンの接種対象者は以下の通りです。1)65歳以上の高齢者。2)2~64歳で慢性心不全、慢性呼吸器疾患(COPDなど)、糖尿病、アルコール中毒、慢性肝疾患(肝硬変など)、髄液漏のある方。3)脾摘後、脾機能不全の方。4)老人施設や長期療養施設などの入所者。5)易感染症患者です。65歳以上の方には自治体からの補助金の制度があります。
平成26年6月には、今まで小児のみに使用していた13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー®)が、65歳以上の成人に適応拡大されました。米国では、プレベナー®とニューモバックス®の連続接種により、肺炎球菌ワクチンの予防効果を増大、拡大させる可能性を期待して、両者の併用療法が推奨されるようになりました。
風邪と抗生物質について
2017-12-01
Q:風邪で病院を受診すると抗生物質(以下抗菌薬)が処方される事が有りますが有効なのでしょうか。
A:人の身体に感染して病気を起こす微生物には細菌、ウィルス、真菌(カビ)などが有りますが、発熱・鼻汁・鼻閉、咽頭痛、咳などを主症状とする風邪症候群と呼ばれる急性気道感染症の9割はウィルスが原因と言われています。抗菌薬は細菌の増殖を抑えたり、殺したりする薬剤ですので、殆どの風邪には効果が無いばかりでは無く、アレルギー反応、腎障害、肝障害などの有害事象が起こったり、薬が効かなくなる耐性菌の増加という問題があり全世界で抗菌薬を適正に使用するように対策がなされています。本邦でも厚生労働省は医療者向けに「抗微生物薬適正使用の手引き」を公表しました。特に耐性菌の問題は深刻で2050年には全世界で年間1000万人が薬剤耐性菌により死亡する可能性が懸念されており、抗菌薬の適正使用は喫緊の課題です。
適切でない抗菌薬の使用とは不必要な疾患に投与する「不必要使用」と、必要であるが薬の選択が間違っている「不適切使用」が有りますが、風邪に対する抗菌薬使用は「不必要使用」に該当し、6割が不必要使用であるとの指摘もあります。
では、なぜ現在でも風邪に抗菌薬が処方されるのでしょうか。患者側としては風邪に抗菌薬が良く効くという思い込みが有り、過去に抗菌薬を服用するとすぐに治ったなどの成功体験があり、医療者側としては、診察現場で細菌感染症の可能性を除外できず症状の悪化を恐れて念のために処方する場合などが考えられます。
風邪症候群の発熱や諸症状は2-3日がピークで数日で自然治癒する一過性の感染症ですので諸症状を緩和する対症的治療と十分な睡眠が最善の治療になります。
ただし、抗菌薬の投与が有効な標準的治療として確立している感染症も存在しますので、感染臓器や病気を起こしている微生物を特定するためにある程度の検査が必要な場合もあります。
近年は抗菌薬の開発には陰りがさしており、残された抗菌薬を未来にまで有効な財産として残すために、抗菌薬の適正使用を患者側・医療者側が共に知識と理解を共有して実践することが大切ではないでしょうか。大動脈瘤について
2017-10-01
Q:大動脈瘤について教えてください。
A:心臓から拍出された血液が、大切な脳や腎臓、肝臓などの臓器に運ばれるときに通る幹線道路の役割をするのが大動脈です。大動脈瘤というのはこの大動脈が部分的に大きくなったものをいいます。
動脈瘤の原因は、動脈壁が弱くなる変性疾患や、外傷、炎症などいろいろありますが、多くは動脈硬化です。動脈硬化の危険因子である高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病などが関与しています。そして動脈硬化という名前とは裏腹に、動脈の壁が弱くなり、だんだんと膨らんで大きくなり動脈瘤が形成されます。
膨らんだ血管は最終的には破裂に至り、出血性のショック状態から生命の危険につながります。破裂してからの緊急手術では多くが救命困難であり、破裂前に発見し治療を行うことが重要です。
動脈瘤治療の目標は破裂を避けることです。そのため瘤を拡大させる危険因子の治療・管理が重要ですが、内服治療だけでは破裂を完全に予防することは不可能であり、外科的治療も必要になってきます。破裂する時期を予想することは困難であり、専門的に瘤径、拡張速度、形状などから手術時期を検討します。
動脈瘤に対する外科治療は、瘤になった血管を人工血管に置き換える人工血管置換術が標準的な方法ですが、最近はカテーテルで行うステントグラフト内挿術という方法も開発されました。この方法は身体への負担が少ないという利点があります。
大動脈瘤は、ほとんどが破裂するまで無症状です。そのため動脈瘤が指摘されていなくても、高齢や高血圧などの動脈硬化の危険因子を有していたり、あるいは他の循環器疾患、ご家族に動脈瘤を患った方がおられる場合は、将来動脈瘤ができる危険があり、胸部レントゲン写真や腹部超音波検査などを数年ごとに受けていただくことをおすすめします。
夏に流行しやすい感染症について教えてください
2017-08-01
Q.夏に流行しやすい感染症について教えてください
A.夏に流行しやすい感染症には手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱などがあります。
手足口病は2015年の夏に大流行しましたが、文字通り手のひらと足の裏と口の中に発疹のできる感染症です。発熱を伴うことが多く咽頭痛もあります。同じ症状を起こすウイルスが複数あるため、手足口病には何度もかかります。予防するためのワクチンはありませんが、重症化する頻度は高くありません。
ヘルパンギーナは手と足には発疹は出ず、口の中にだけ発疹のできる感染症です。発熱を伴うことが多く咽頭痛もあります。手足口病と同様に同じ症状を起こすウイルスが複数あり、手足口病を起こすウイルスと一部重複しています。予防するためのワクチンがないことや、重症化する頻度が高くないことも手足口病と似ています。
プール熱は正確には咽頭結膜熱という病名であり、アデノウイルスというウイルスによって引き起こされます。一般にはやり目と言われる流行性角結膜炎もアデノウイルスによって引き起こされます。アデノウイルスは50種類以上の亜型に分類されており、型によって結膜炎、肺炎、咽頭炎、扁桃炎、胃腸炎、膀胱炎など多彩な症状が出現します。発熱を伴うことが多く長引くこともあります。予防するためのワクチンはありません。
今回説明した感染症は全てワクチンがありませんので、予防するためには手洗い、うがいが大切です。ワクチンは重症化しやすい感染症から優先的に研究されますので、ワクチンのある感染症よりは重症化する確率は低いと言えます。今一度母子手帳を確認して接種年齢に到達しているのに接種していない予防接種があれば必ず受けるようにしましょう。